英語サイト
英語サイト

喜多方ラーメン坂内

40年近い歴史を持つ、喜多方ラーメン坂内を国内外に展開している株式会社麺食Asia&Pacificの代表取締役社長の藤原栄朋氏に海外展開に関するお話を伺いました。
中西:初めまして。ですが、ZOOMで先に数度お会いしていますので、本日はリアルでの対談を非常に楽しみにしていました。
私自身は去年、大阪の日本橋のお店に伺い、美味しさが健在で感動しました。あっさりしていて深みのあるスープ、そして私が30年以上愛し続けているあのちぢれ麺も素晴らしかったです。
本日は海外展開のお話ですが、藤原さんのバックグランドも非常に興味があります。
藤原氏:私自身は、理系のバックグランドを持ち、大学を出てからは飲食産業とは異なる分野である商社で長くお世話になっていました。インド、タイなど海外を飛び回るというよりは現地に腰を据えて駐在し色々なビジネスに携わらせていただいていました。駐在期間が終わり日本に戻り、数年したところで学生時代にアルバイトをしていた飲食店の店長だった、現在の株式会社麺食の中原誠社長に「日本食で一緒に世界を拓かないか」と誘っていただき、心が大きく動き今に至ります。現在は株式会社麺食のアジアの拠点としてマレーシアに現地法人を設立し、周辺国、日本を行き来しています。
喜多方ラーメン坂内は、歴史が長く、ルーツは福島県喜多方市にある坂内食堂です。こちらの名物ラーメンと「美味しい食事をおなか一杯お客様に食べていただきたい」という理念に先代の中原明名誉会長が惚れ込み、職人として修行を重ね「喜多方ラーメン坂内」を生み出しました。現在の店舗数ですが、日本国内で直営店舗とFC店が69店舗、アメリカでは9店舗、今年ドイツが1店舗加わりました。特徴は、どのお店も息が長いことです。それは、元々の食堂の根本である、毎日来ていただいても飽きない、つまり月単位の中で何回か訪問してくださるリピーターが多く、結果20年以上継続しているお店が沢山あります。
中西:それは素晴らしいですね。改めて、ラーメンの特徴を教えていただけますでしょうか。私自身、割烹料理屋の女将の頃に、東北に食材の買い付けに参り、その時いただいた「喜多方ラーメン」の味に感動し、取り寄せるにとどまらず、あの絶妙な計算された太さの麺の太麺と餃子の皮を開発し、お客様に提供したところ、反応が悪く、大失敗した笑えるような思い出があります。
藤原氏:中西さんの思い入れは凄いですね。喜多方ラーメンは日本の三大ご当地ラーメンの一つです。これは札幌ラーメン、博多ラーメン、喜多方ラーメンです。
喜多方ラーメンの特徴は、豚のスープですが濃厚な白濁したスープではなく、ぐつぐつ煮込むのではない独特の製法で、透明なスープに仕上げます。ご存知の通り、世界に広まっているラーメンは白濁した豚骨スープが圧倒的です。
そのため、10年前のアメリカへの直営での進出は多くの困難がありましたが皆で苦労して切り拓いてきて今は大繁盛しています。この道をもっと広くしていきたいと考えております。
中西:中原誠社長の著書も拝見しましたが、その当時のアメリカでの壮絶な努力と情熱が現在に至るわけですが、開拓者「麺食」としてのアメリカでのご苦労をお聞かせお願いできますでしょうか。
藤原氏:アメリカへの喜多方ラーメンの進出は、中原誠社長の強い思いで実現しました。道がない道を開拓してきた語り尽くせない苦労があります。我々のような透明なあっさりした味は受け入れられないと部外者から散々言われましたが、アメリカは多民族国家であり、既にベトナムのフォーなどあっさり味のスープが受け入れられていましたので、そんなことは無いだろうと、ある程度の確信は得ていました。製麺は現地で、味のポイントである豚も現地で買い付けました。ご存知のように、アメリカでのビジネスの許認可工程は、非常に沢山のプロセスが求められます。立地選定もペルソナで仮説を立て、かなり計画的に試行錯誤の繰り返しで行いました。多くのラーメン店がそうであったアジアに最初に行かなかった理由は、アメリカにこそハードルがありますが、その先には勝機があると思ったからです。一番最初にクリアした上で他の地域をせめていくというハードな道のりを選択しました。その過程でも皆で悩みましたが、そこに正解があったと自負しています。日本以外での進出先を選ぶ際「ラーメン偏差値」をいつも気にするようにしています。これが高い国がアメリカであり、ヨーロッパです。つまり第一走者にならなくても、良いと考えておりまして「第二走者、機を熟した頃にスタート」しても十分チャンスが私たちには残されているわけです。世界には、このスープも麺もまだ行き渡っていないためです。最近では、アジア諸国も非常にラーメン偏差値が高くなって参りましたので、そろそろこちらにも力を入れ、水面下で色々なリサーチや人脈探し、交渉も行っています。アメリカでの膨大なエビデンスを元にこれから海外のFC化を加速させます。
中西:日本国内の社内においても御社は、かなりグローバル化を推進されていますが、それが今後の海外展開にも生きてきますね。私は海外の方にはぜひ、日本にいる間に愛するブランドで働いてノウハウや日本の食文化を習得していただき、母国でそのブランドの店主や経営者になっていただくという「グローバルのれんチャイズ構想」を妄想しておりましたが、御社はまさにそちらを今後推進される感じで、非常に嬉しく感じています。
藤原氏:はい、私自身もこちらを非常に重要な社内スキームだと感じ、推進しています。
いずれ彼らが、母国に戻った際に、麺食で培った信頼関係をベースに色々な部分で関わってもらい、パートナーとして一緒に成長していけたらと心から願っています。なお、アメリカでは、日本の喜多方ラーメンの味を再現するように心がけています。ではアジアはどうかと申しあげますと、同じく日本の喜多方ラーメンの味の再現には強く拘わる一方で、ローカライズメニューに関しては、3割位は地域の嗜好に合わせたメニュー開発をしますし、しなければならないと考えています。日本の味を守りつつ、ローカライズし過ぎないというのがポイントです。このような我々の考えを理解してもらえる現地のパートナーを根気よく探していきたいと強く思っています。
中西:濃いお話をお聞きできありがとうございました。今後の展望をお聞かせくださいますでしょうか。
藤原氏:弊社のグループ代表の中原が著書「日本食globalization」でも伝えていますように、日本食の可能性は、無限大です。ところが、現在、海外では、日本食はビジネススキームとして拡大が上手な海外の経営者たちが日本食のポテンシャルに気がついています。もちろんその部分は尊敬していますが、私たち日本人自身ももっと、この素晴らしい、先人の方々が伝統を守り創り出した「日本食」というコンテンツをさらに、守りながら攻めて世界進出を果たしていきたいと考えています。
現在は「ラーメン」ですが、私たちは日本食のプラットフォームになり、かつ日本食のコンテンツプロデューサー集団を目指します。海外から日本に来てくれた多様性のあるメンバーたち、社員たちがそちらに向かって走っています。「日本から来た、あっさりしているけれども、うまいラーメン」は2030年までには、アメリカを皮切りに世界各国でチェーン展開を成し遂げる予定です。日本は食のシリコンバレーになれます。そのルーツを守り発展させるためにも世界に出ていきたいと思います。